夫婦の関係が変わっても、親子の未来を考え続ける
離婚や別居によって、夫婦はそれぞれの道を歩み始めます。しかし、父と子、母と子の関係をどう考え、どう支えるかという課題は、その後も続きます。
親子が離れて暮らすことと、親子の関係が途絶えることは同じではありません。一方で、関係が長く途絶えたとき、再び向き合うことには複雑な事情や不安が伴います。
リユニオンは、親と子それぞれの意思と安全を尊重しながら、離れて暮らす親子が必要な支援を受けられる社会を目指します。

出発点となった研究
代表の須田桂吾らは、2021年に論文「離婚に伴うわが子との別離における親の精神状況とその背景――当事者による語りを材料とした質的研究」を発表しました。
この研究は、子と会えなくなった、あるいは会いにくくなった親56人の回答を質的に分析したものです。当事者の語りには、不眠や抑うつ、心身の不調、仕事や社会生活への影響、自殺を考えた経験などが含まれていました。これらの人数は、調査に回答した人々についての結果であり、別居親全体における発生率を示すものではありません。
研究の意義は、親の苦痛を数値で一般化したことよりも、その苦痛がどのような経験や関係の中で生じ、長引くのかという問題の本質を、当事者の語りから捉えようとしたことにあります。
夫婦間の対立だけでは捉えきれない問題
論文は、親子の別離をめぐる困難について、父母間の対立に加え、裁判所、法律、行政などを当事者がどう経験しているかにも目を向けました。そして、親の精神的な危機の背景には、個々の夫婦の紛争だけでは捉えきれない問題の構造があると論じています。
これは、特定の制度や機関が個々の事例で不当な対応をしたと一律に認定するものではありません。当事者の語りから見えてきた構造を、さらに検討し、支援や制度の改善につなげようという問題提起です。
論文はまた、離婚後の共同親権を実現すれば、それだけで問題が解決するという見方にも慎重です。親子関係をめぐる現実を調べ直し、法制度とともに、具体的な社会的支援を構築する必要性を示しました。
研究の書誌情報
須田桂吾・吉﨑基弥・井上陽(2021)「離婚に伴うわが子との別離における親の精神状況とその背景――当事者による語りを材料とした質的研究」『家族療法研究』38巻3号、275–283頁。
研究の問題提起を、その後の支援へ
離婚前後の家庭を対象とする施策には、親支援講座、相談、養育費や親子交流の取決めへの支援、親子交流時の連絡調整や付き添いなどがあります(離婚前後家庭支援事業について:こども家庭庁)。
それでも、親子の関係が長期間途絶えた後、親と子がそれぞれの経験を整理し、今後の関係を考えたいとき、どのような専門的支援につながれるのかは、十分に見通せる状況ではありません。これはリユニオンの問題意識であり、今後、自治体や支援現場の実態を調べて確かめたい課題です。
国の資料にも「親子関係再構築支援」という考え方があります(親子関係再構築のための支援体制強化に関するガイドライン)。交流の再開だけを目的とせず、交流がない場合の心の整理も含む幅広い支援として示されています。ただし、その主な文脈は虐待など養育上の課題を抱える家庭です。リユニオンは、この知見も踏まえつつ、離婚・別居によって関係が長く途絶えた親子に必要な支援を具体的に考えていきます。
私たちが考える親子関係の再構築
関係の再構築は、必ず会うことでも、以前と同じ親子関係に戻ることでもありません。
まず親自身が別離の経験や自分の関わり方を振り返ること。子が自分の気持ちや生い立ちを整理すること。必要があれば、距離を保った連絡から考えること。こうした過程も、それぞれの状況に応じた支援の対象です。
私たちは、子の現在の意思と心理的安全を尊重します。交流を強制したり、父母のどちらかを選ぶよう求めたりしません。また、親の苦痛にも目を向け、親だけに問題を負わせず、関係が途絶えた背景を丁寧に考えます。
ここでいう**「子」は未成年者に限りません**。子が成人した後も、親と子の双方に、過去を理解し、これからの関係を考えたいという切実な思いがあり得ます。未成年の子への支援と成人した子への支援では、本人の意思や支援の進め方を、それぞれに応じて考えます。
構想を実際の支援につなげる道筋
リユニオンは、必要な支援を理念だけで終わらせず、現状を調べ、関係者と検討し、実践につなげたいと考えています。
| 段階 | 取り組みたいこと |
|---|---|
| 1.現状を調べる | 自治体や支援機関への共通質問を通じて、長期に関係が途絶えた親子の相談をどこが受け、どのように対応しているかを把握する |
| 2.課題を共有する | 調査結果を、当事者、心理・福祉・法律の実務者、研究者、自治体、議員などと検討する |
| 3.支援の方法を組み立てる | 親と子それぞれへの相談、気持ちや経過の整理、必要に応じた連絡・交流の支援方法を考える |
| 4.実践して確かめる | 関係機関との協働を探り、当事者の安全、意思、有用性を確かめながら支援を改善する |
まずは地域を限った予備調査から始め、その結果に応じて調査対象や協働先を広げることを構想しています。
リユニオンが目指すこと
リユニオンは、目の前の親や子への心理支援と、社会に必要な支援の仕組みづくりの両方に取り組みます。
親子の交流が実現したかどうかだけで、支援の価値を測ることはできません。親と子がそれぞれの経験を理解し、自分の意思で今後の関係を考えられること。そのための相談先と支援の道筋があることを大切にします。
夫婦として別々の道を歩むことになっても、親子の関係について考え、必要なときに支援を求められる社会へ。リユニオンは、研究、実践、関係機関との協働を通じて、その道をつくっていきます。
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